宮崎大学国際連携センター

学生・留学生向け情報

海外へ留学したい学生へ

留学体験記

ブラウィジャヤ大学に留学して

宮崎大学大学院工学研究科 斎藤 詩織
(平成18年度 インドネシア・ブラウィジャヤ大学に留学)

私は「短期留学推進制度(派遣)」による宮崎大学からの交換留学生として、2006年8月から2007年2月までインドネシアのマラン市にあるブラウィジャヤ大学大学院に留学していた。留学希望理由は、同じ研究室のインドネシア人留学生との交流からインドネシアの都市計画に対する興味を持っていたからである。それよりもインドネシアという国に対する興味の方が上回っていたのかも知れない。大小17000もの島々と300の民族からなる国、世界最大のイスラム国家、日本の最大援助支援国、新しい記憶ではバリ島やジャカルタでの爆破事件やアチェ沖での地震……私が手にしていた数少ないインドネシアに関する情報は国内の様子をはっきりイメージできるにはほど遠いもので、その単語一つ一つに不安すら覚えたが、実際現地に行かないと分からない! という思いだけでインドネシアへ飛び立った。

留学生活が始まるとすぐにインドネシア語が理解出来ないと授業も日常生活も不自由であると感じ、インドネシア語の勉強を始めた。しかし専門科目の授業内容が理解出来るようになるまでには時間がかかり、先生方の話を聞くだけでディスカッションに加わることが出来ず、やり切れなさを感じる日々が続いた。いつの間にか何もかもに受身になっている自分に気が付いた。言葉以外にもインドネシア(人)の生活スタイルや思考などあらゆる面は日本(人)とほぼ正反対であり、気持ちの余裕を失っている自分にはそれが重くのしかかっていた。そんなある日、担当教官からの一言「言葉や文化、考え方の違いを気にして萎縮するのはもったいない。相手に興味を持つ、それだけでいいのです。それが全てではないですか? 互いの違いなんて小さいこと。」この言葉に救われた。以来開き直って積極的に言葉を使い、あちこちに足を伸ばすようになった。結果、言語の上達を早め、互いの違いを楽しみ共通点を見つける喜びを感じられるようになり留学生活は次第に充実していった。

ブラウィジャヤ大学大学院は生徒数こそ少ないものの、学生は個人の意見をしっかり持っていて授業中は積極的なディスカッションが行われていた。専門分野こそがブラウィジャヤの学生との最大の共通言語であるのに、私はと言うと話を聞いてばかりで発言することはほとんどなかった。しかしそれは決して言語の壁があったからではなく、同じ分野を志す学生としての意識が彼らに比べ低かったからだと考えている。悔しさと恥ずかしさから、学生同士の交流を通し、自分に足りないものを見つけ少しずつ補っていく、ひたすらそれを繰り返した。半年間の留学生活は確かに短かったが、インドネシアのゆっくりとした時間の流れは、自分自身を見つめ直すには充分に足るものであった。

日常生活ではムスリムの日々のお祈りや断食月の様子を見ることができた。そして短い留学生活の間に時間を作っては国内旅行をした。ジャワ島内をはじめ、スラウェシ島、バリ島、ロンボク島。そこでジャワ人、ブギス人、バリ人、サッサ人の生活様式を目で確かめることが出来た。前述のようにインドネシアは多民族国家で、その上島によって歴史的変遷や宗教が異なるため、同じ国とは思えないほど町の様子が異なる。机の上だけでは決して味わうことの出来ない「生きた」町の様子を知ることが出来たのは非常に良い経験になり、それがそのまま都市計画を学ぶことへのモチベーションに繋がった。私の研究テーマは地方分権化を背景にする都市計画決定システムなのだが、インドネシアは地方分権化の真只中で、その影響が(地方ほど)顕著に表れている。インドネシアのケーススタディを進める向こう側に、自分が足を運んだ町や村の様子が浮かび、事象を捉える助けになった。また、留学前に手にしていた情報から思い描いていた(または一般的な)インドネシアのイメージがいかに一面的か、逆に言えば溢れる情報の中から本質を掴むことがいかに難しいかを学ぶことが出来た。

振り返ってみると、心身ともに健康で過ごせた日の割合の方が少なかった気がする。慣れない海外生活で半年間自分のスタンスを見失わないでいること、反対に柔軟に溶け込んでいくこと、そのバランスの取り方に大変苦労した。しかしこの経験こそが、残りの学生生活やその後の社会生活において自身を支える礎になることは間違いないであろう。

研究の面では、インドネシア独自の問題点を抽出することが出来たものの、その背後にある社会に関する知識が不十分であったため充分な考察が出来なかった。この点は今後の課題とし、研究室のインドネシア人留学生と共に研究を進めることとする。遠く離れた国で同じ志を持った仲間が居るということを忘れずに、今後も勉学に励みたいと考えている。