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留学体験記

ダニーデン教育大学に留学して

宮崎大学教育文化学部 山下 美保
(平成16年度 ニュージーランド・ダニーデン教育大学に留学)

宮崎大学でアメリカ文化論研究室に所属し、4年間アメリカ及びイギリスの文化を中心に学んできた私は、今回のニュージーランドへの留学を異文化理解の実体験と欧米社会機構の内部における学習の機会であるととらえ、異文化理解とニュージーランドの社会科学習を主に勉強して参りました。

私の専門分野との関連性や知的好奇心から特に印象に残った学習は、デイヴィッド・キーン教授の講義『アイルランドとニュージーランドの植民地化に関する歴史と社会の比較』というものでした。この授業は紀元前のケルト民族やローマ帝国支配下のグレート・ブリテンから近代に至るまでのイギリス史のようなものですが、イングランドのみ重点をおいてきた日本でのイギリス史理解とは異なって、アイルランドとニュージーランドの比較という点がニュージーランドならではのものといえるでしょう。ニュージーランドの学生たちにとっても現実的なこの視点から歴史にアプローチするこの授業への参加によって、私は歴史の本質的な理解により近づくことが出来ました。また、私の卒業研究及び卒業後の研究テーマは近代のアメリカ文化学にしぼられているために、大英帝国による植民地政策というこの授業で学んだエッセンスは植民地国家として発展してきたアメリカの歴史や文化を理解する上で積極的に活用することが出来ました。この留学体験において、私にとっての大きな収穫は、この授業に多く集約されているということが言えます。

アイルランドの植民地化が困難を極めたこと、そして第二次世界大戦後の連合王国からの独立という形でイギリスの形態による秩序が拒否された背景にはカトリック対プロテスタントの宗教的葛藤や、西洋史における一大勢力としてのアイルランドがヨーロッパの大国間の外交に翻弄されてイングランドに対して重要な役割を担ってきたという事実があり、この点で近世以降の西洋史の問題点が凝縮された形で一部露呈されているように感じました。またニュージーランドの先住民族マオリに対する植民地政策に関しては、白人優越主義やマオリに対する土地の剥奪という暗い歴史のみならず、マオリのほうも未開の生活から西欧型近代文明の豊かさや技術欲しさに積極的に白人支配との妥協を図ってきたという現実的な視点を与えられました。カトリックとプロテスタントの宗教対立や人種差別問題、そして未開文明と近代文明のグローバライゼーションというテーマはアメリカ文学においてもとても現実的なテーマであり、とても興味深く感じました。

これらの真新しい視点による刺激を与えられた後、身近な植民し政策問題についてプレゼンテーションをする機会を学生たちは各自与えられたのですが、個々で私は始めて欧米との比較的な視点になって日本における沖縄の植民地化政策について調べ、考え、発表することになりました。このときに以前単なる歴史の理解としてしか持っていなかった知識により深みを与える発想が出来るようになっていることに私は気がつかされました。

直接の講義における知識の習得以上に人文学的な学習に関して多大な効果を発揮したのは、移民や留学生たちのモザイク・カルチャー、多文化社会を辞任するニュージーランドにおけるさまざまなエスニシティを持つ人々との交流や、ニュージーランド人の学生たちとの寮生活での触れ合いの体験だと思います。留学期間はたったの十ヶ月だったとは思えないほど、思い出としても学習成果としても貴重な記憶が凝縮された日々だったと思います。